都市計画用語集-公園・緑化

公園

公園は法律上、都市公園法の対象となる「都市公園」と、自然保護を目的とする事前公園法の対象となる「自然公園」の2つに分けられる。

都市公園

遊具で遊んだり、運動をしたり、花を楽しんだりすることを目的に都市の内部に作られた施設。レクレーション以外にも多くの機能を持つ。

レクレーション 都市住民に多様な余暇活動や健康増進活動を支える場を提供する。
環境保全 ヒートアイランド現象の緩和、生物多様性の保全、騒音・振動の吸収などによる良好な都市環境を提供する。
防災 延焼防止、災害時の避難場所、救急救命・救護活動の拠点となる。
景観形成、にぎわいの創出 中心市街地のにぎわいの場となる公園・広場、地域の歴史的・自然的資源を活用した観光振興の拠点としての公園は、景観形成はにぎわいの創出に寄与する。

都市公園の種類

大区分 種別 概要 標準面積
住区基幹公園 街区公園 住宅街などに設置され、子供の遊び場や高齢者の運動の場として整備された公園。標準で半径250m程度に住む人々が利用することを想定。 0.25ha
近隣公園 上記同様の目的で設置され、標準で半径500m程度に住む人々が利用することを想定。 2ha
地区公園 上記同様の目的で設置され、標準で半径1km程度に住む人々が利用することを想定。「○○中央公園」と名前が付くものが多い。 4ha
都市基幹公園 総合公園 市全域の人々が、レクレーション・運動など総合的にに利用することを目的とした公園。  
運動公園 市全域の人々が、運動に利用することを目的とした公園。陸上競技場・野球場・テニスコート・体育館などが設置される。  
大規模公園 広域公園 複数の市町村の住民が利用することを目的とした公園。 50ha
レクレーション都市 複数の市町村の住民が、屋外レクレーション(屋外イベントなど)に利用することを目的とした公園。 全体規模1000ha
国営公園 複数の都道府県の住民が、利用することを目的として国が設置する大規模な公園。 300ha
特殊公園 風致公園、動物公園、植物公園、歴史公園、墓園などの特殊な公園。  
緩衝緑地等 緩衝緑地 工業地帯と住宅地・商業地の間に設置し、公害被害の軽減や災害防止に役立てる緑地。  
都市緑地 都市内の自然環境の保全、都市景観の向上のために設置する緑地。  
都市林 主として動植物の生息地または生育地である樹林地等の保護を目的とする都市公園。  
緑道 災害時における避難路の確保、市街地における都市生活の安全性及び快適性の確保等を図ることを目的として近隣住区又は近隣住区相互を連絡するように設けられる植樹帯及び歩行者路又は自転車路を主体とする緑地。各都市施設(公園、学校、ショッピングセンター、駅前広場等)を相互に結ぶよう配置する。  
広場公園 市街地中心部の商業地などで、人々が休憩したり、景観の向上に役立てるために設置される公園・広場。  

防災公園

都市の公園や緑地はもともと防災機能を持っているが、この中でも特に高い防災機能を持つよう計画された公園。備蓄倉庫、耐震性貯水槽、放送施設、情報通信施設・ヘリポートなどの設置が推進されている。
機能区分 公園種別 面積要件
拠点機能 広域防災拠点 広域公園など 50ha以上
地域防災拠点 都市基幹公園など 10ha以上
避難地機能 広域避難地 都市基幹公園、広域公園など 10ha以上
一次避難地 近隣公園、地区公園など 2ha以上
避難路 緑道 幅員10m以上

公園施設

園路広場 園路、広場
修景施設 植栽、芝生、花壇、噴水、池、築山、彫像など
休養施設 休憩所、ベンチ、ピクニック場、キャンプ場など
遊戯施設 遊具、砂場など
運動施設 野球場、陸上競技場、テニスコート、体育館など
教養施設 植物園、動物園、野外劇場、野外音楽堂、図書館、体験学習施設、遺跡など
便益施設 売店、飲食店、駐車場、便所など
管理施設 門、朔、管理事務所、倉庫など
その他施設 展望台、集会場、備蓄倉庫、ヘリポートなど

庭園

都内に多く残る大名庭園をはじめ、公園にはかつて寺社や権力者によってつくられた庭園だったものが、近代以降一般開放されたものも多い。

  • ヨーロッパ
整形式庭園 庭園の中の植込みなどを自然のままの姿ではなく一定の形に刈り込んだり、花などを幾何学模様に植えた庭園。丘の上からの眺望を楽しむ、建物を軸線として左右対称の構成をとるなどの特徴を持つ「イタリア式露壇庭園」や、刺繍花壇と呼ばれる幾何学模様の花壇、多数配置された噴水と彫刻などを特徴とする「フランス式幾何学庭園」などがある。
自然風景式庭園 18世紀にイギリスで流行した庭園で、左右対称や幾何学模様を排除し、自然の景観を追求した広大な庭や池から構成される。ガーデニング用語として使われる「イングリッシュガーデン」は、この流れを汲んでいる。

  • 日本
池泉庭園 池や石・築山などを使って自然の山水の景色をイメージしてつくられる庭園。平安時代の貴族の屋敷に作られた寝殿造庭園、江戸時代の大名屋敷の庭園に多い回遊式庭園などがある。
枯山水 水を使わずに、石や砂利で川や海を、岩で島や山など山水の風景を表現する庭園様式。抽象的な表現の庭が室町時代の禅宗寺院で特に好まれた。
露地 茶の湯における茶室に付随する庭園。茶室へ続く飛石、手を洗い清めるつくばいなどから構成される。

自然公園

 公園として指定し土地利用の制限・禁止によって、自然景観を保全することを主な目的とする公園。レクレーションや運動を主な目的とする都市公園とは違い自然の保護が主な目的であるが、ハイキングコースや自然遊歩道、自然観察を目的としたビジターセンターなどが設置される場合もある。
国立公園 日本を代表する自然の風景地を保護し利用の促進を図る目的で、環境大臣が指定し国が管理する公園。現在は34箇所の国立公園が存在している。
国定公園 国立公園に準じる景勝地として自然公園法に基づいて環境大臣が指定し都道府県が管理する公園。現在は56箇所の国定公園が存在している。
都道府県立自然公園 都道府県の条例に基づき、その都道府県を代表する優れた風景地について知事が指定する公園。全国で315箇所ある。

そのほかの公園

  • 集合住宅の公園
  • 墓地・斎場
  • 寺社
  • リゾート・テーマパーク

緑化

建築緑化

都市内部の緑の減少は、ヒートアイランド現象をはじめ環境への様々な変化を引き起こしている。また緑はコンクリートの無機質な印象をやわらげる意味でも重要であるが、一方で都市内部に新たに公園用地を確保することが難しいことなどから、建築緑化が実施されている。

  • 期待される効果
環境改善効果 空気の浄化、振動・騒音の吸収、微気象の緩和、安らぎ感の向上
経済効果 酸性雨や紫外線からの壁面劣化防止、夏季の温度上昇の低減、冬季の保温、宣伝効果
都市環境改善効果 ヒートアイランド現象の軽減、都市大気の浄化、雨水流出の緩和、都市景観の向上、うるおい・安らぎ感の向上

  • 建築緑化の種類
屋上緑化 薄層緑化 屋根などをセダム(マンネングサ)などにより薄く覆う
屋上庭園 屋上に土を持ち込み、そこに木を植えるなどして庭園とする
壁面緑化 つる植物などを壁に巻き付け・垂れ下げたりする。緑のカーテンとも。
屋内緑化 建物内部に庭園などを設ける

緑地保全

都市緑地法

都市緑地保全法の一部が2004年に改正され、名称が「都市緑地法」に改称された。
都市緑地法では、都市の緑地保全や緑化の推進により良好な都市環境の形成を図ることを目的とする。

緑の基本計画

市町村が、緑地の保全や緑化の推進に関して、その将来像、目標、政策などを定める基本計画。以下のような内容を定める。
  • 緑地の保全、緑化の目標
  • 緑地保全地域、緑化地域内の緑地の保全
  • 都市公園の設置・整備方針

緑地保全地域、緑化地域

  • 緑地保全地域:里地・里山など都市の近くにある比較的大規模な緑地において、開発行為などを一部規制し緑地を保全する地域
  • 緑化地域:緑が不足している市街地などにおいて、大きな建築物の新築・増築を行う場合に、敷地面積の一定割合以上の緑化を義務づける地域

風の道・水の道

ヒートアイランド対策として、海や山からの涼しい空気が都市内にうまく流れ込むよう、河川・幅員の大きい道路などを風の通り道とする。風を遮らないよう周辺の建築物の高さ制限などを都市計画で行う場合がある。

緑のネットワーク(エコロジカルネットワーク)

公園や緑地、森林、農地、河川、海を都市内に点在させるのではなく、緑化した道路でつないだり緑地を線上に配置したりすることで、野生の動植物の生息地の連続性を確保し生物多様性を確保する。

ミティゲーション

貴重な森林や緑地を保護するため、道路などを建設する際にその森林などを避けるなどして自然に与えるダメージを緩和・軽減する取り組みで、国内では環境アセスメント法により義務付けられている。
回避 道路を迂回させたりすることで自然への影響を回避する
低減 道路の車線数を減少させる、防音壁・緩衝帯を設置する、トンネルにより地下化するなどして影響を低減する。
代償 回避や低減では不十分な場合に、そこで損なわれる自然環境の代わりになる森林、池などを別の場所に作り代償とする。

河川・海岸

 国内では、高度経済成長期に都市化が進展する中で河川は生活・工業排水を流すための「下水道」として扱われることが多かった。このため、コンクリートによる護岸で固められたり、ドブと化した川の悪臭を抑えるためコンクリートで蓋をし「暗渠」としたりした結果、都市内から自然な河川が消えていった。この反省から親水性や環境保全を重視した河川管理を行う流れが進んでいる。

多自然川づくり

河川が本来もっている生物の生息環境や多様な景観を保全しつつ、治水・利水機能と両立させた河川管理を行うこと。
  従来技術 多自然川づくり
川道 水がスムーズに流れるようなめらかに、直線的に、川幅は一定、凸凹はなくす なるべく元の川の形を崩さない、直線化しない
護岸 必要に応じてする、コンクリートで固める なるべくしない、極力コンクリート護岸に頼らずに現場の石材等を使用しつつ、表面を植生が覆うように配慮する
景観 特に配慮なし 直線を用いない、コンクリートが露出しないなど景観に配慮
利用 特に配慮なし 川を市民が利用できる配慮、少なくとも川に降りられるようにする

植生護岸工

法面全体を植物で覆って根を張らすことで法面の安定を図る工法。コンクリートブロックなどで護岸を行ったうえで、その上に土を均し植物の育成を促す。植物により法面を覆うことで自然環境の保全や景観の向上が期待できる。

ビオトープ

ビオトープは、本来その地域にすむさまざまな野生生物が生息することができる空間のことで、「生物の生息空間」と訳される。国内ではビオトープが各地でつくられるようになり、干潟、湿地、湖沼、河川などの水域や、里山林、草原など、地域の自然を生かしたさまざまなビオトープが市町村やNPOなどにより整備されている。

親水公園

親水とは、水や川に触れることで水や川に対する親しみを深めることで、コンクリート護岸になってしまった川を自然護岸に戻して川への親しみを取り戻そうとする市民の欲求により、各地に「水に親しむ」を目的とした親水公園が作られている。
暗渠になっていた川を元に戻したり、人工的な河川や緑道を作ったり、ホタルなどの野生生物の生息地を作るといったことが行われている。

  • 最終更新:2017-11-12 00:27:34

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード