都市計画用語集-道路


道路

道路とは人や車両などが通行するためのみち、人や車両の交通のために作られた地上の通路である。

道路の種類と法律

一口に「道路」といっても日本の法律では多種多様な「道路」が定められている。それぞれの道路は根拠となる法律ごとに設置の目的・管理する組織などが違う。

  • 道路法
    • 高速自動車道
    • 一般国道
    • 都道府県道
    • 市町村道
  • 土地改良法
    • 農業用道路:日本の農村地域において農業で利用するために作られた道路。いわゆる「農道」。
  • 森林法
    • 林道:森林の整備・保全を目的として作られる道路。
  • 港湾法
    • 臨港道路:港湾内、あるいは港湾と周辺の道路を結ぶ道路。
  • 自然公園法、都市公園法
    • 公園道
    • 園路
  • 法律なし
    • 私道

道路の機能

交通機能 トラフィック機能 自動車・自転車・歩行者などへの通行サービス より短い距離・時間で目的地へ到達できること、道路交通の安全確保、交通混雑の緩和
アクセス機能 沿道の土地、建物、施設への出入りサービス 各施設へのアクセスしやすさ、それに伴う地域の発展、地域開発の基盤
空間機能 防災空間、生活環境空間、公共施設を収容するための空間 市街地形成(都市の骨格形成、地区形成)、防災空間としての利用(避難路、消防活動、延焼防止)、生活環境空間としての利用(緩衝空間、緑化、通風、採光)、収容空間としての利用(ライフライン、駐車場、地下鉄)

都市計画と道路

  • 都市計画道路
自動車専用道路 都市高速道路、都市間高速道路、その他の自動車専用道路など。アクセス機能よりもトラフィック機能を重視。車線数が多く制限速度も高めに設定、信号や交差点を可能な限り減らしスムーズに車が走れるようにした道路。
幹線道路 都市の骨格となり、各地区の主要道路もしくはその外周となる道路。自動車専用道路と区画道路をつなぐ機能もあわせ持つ。
区画道路 住宅地などに利用に使われる道路。トラフィック機能よりアクセス機能を重視。道路沿いの住宅や各施設へのアクセスのため、車線数は少なく制限速度は低めに設定する傾向がある。
特殊道路 主に自動車以外の交通(歩行者、自転車、新交通システムなど)のための道路。
駅前広場 道路の一部として整備される広場。日本では駅を中心に市街地が発展するケースが多いが、ヨーロッパなどでは多くはない。
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  • 幹線道路網の構成パターン
放射環状型 circle-pattern.png 東京、大阪、パリ、ロンドン、ベルリン 歴史的には放射道路が先に作られ、中心部への交通の集中が問題になってから環状道路が作られる場合が多い。大都市に多い。
格子型 grid-pattern.png 長安、北京、平安京、平城京 古代・中世に起源をもつ都市などに見られる。道路網としては分かりやすいが、どの道が幹線道路なのか、道路の機能分担があいまいになる可能性もある。
梯子型 raddar-pattern.png 神戸、サンクトペテルブルク 線状・帯状に都市機能がが配置され、横方向に都市が発展していく。地形のせいで梯子型になるほか、複数の都市をくっつけてひとまとめに発展させる場合などに使われる。
斜交型 gosei-pattern.png デトロイト、ワシントン 格子型に斜めの道路を付け加えたものだが、交差点が複雑になるため、自動車がメインの現代社会にはあまり適していない。
合成型     上の4パターンを組み合わせた形。中心部では格子型、周辺では放射環状型というパターンが多い。

  • 区画道路網のパターン
住宅街などの区画の道路網は、通過交通をできるだけ排除しつつ必要なアクセス機能を持たせる必要がある。以下のようなパターンが考えられるが、実際の都市では地形などの影響により必ずしもこの通りにはならない。
通過交通を排除するため、出来るだけ①行き止まりやループ、クルドサック(袋小路)を使う、②交差点は十字ではなくT字やそもそも交差させないようにする、といった方法をとる。
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通過交通

車がただ通過するだけで直接その地域に用がない交通。いわゆる「抜け道」。住宅地などで通過交通が増えると交通事故や騒音の増加などの悪影響が発生する。このためわざと行き止まりや一方通行を設けて通過交通が発生しないよう対策をとる。
またハンプ(道路に凸凹を作る)、クランク(わざと道路を蛇行させる)、狭窄(道路の幅をわざと狭くする)などの対策により車が速度を落とすよう誘導する場合もある。
参考:ブキャナン・レポート、近隣住区、ラドバーン方式、交通セル

道路建設

道路の構成要素

車道 車両が通行する空間。幅員(ふくいん=車道の幅)は道路の種類や設計速度に合わせて、2.75~3.5mの間で25cm刻みに設定する。
中央帯 対面走行する車両同士の事故防止などを目的に車線の間に設けるもの。多くの4車線以上の道路や制限速度が高い道路は、中央帯により上下線が分離されている。
路肩 車道や自転車道の側面に設けられる。原則すべての道路に設定する必要があるが、特別な場合は路肩の省略・縮小が認められる。
停車帯 沿道の施設への出入りが多い4車線道路では、自動車の駐停車が通行を邪魔しないよう、車道の左側に停車帯を設置する。
自転車道・歩道 自転車や歩行者が通行する部分。幅員の基準として、歩道で歩行者が多い場合は3.5m以上、それ以外では2.0m以上などとされている。
植樹帯 道路交通の安全性・快適性、景観などを目的に都市部の一般国道などには植樹帯の設置が原則として必要とされている。
環境施設帯 道路からの騒音などを軽減し、幹線道路の沿道の生活環境を守るために設置する。植樹帯・路肩・歩道などで構成され車道端から10mを確保することとされている。
建築限界 安全確保のため、標識・信号機を含む通行の邪魔になるものを設置できない範囲。車道の場合高さ4.5mまで、歩道の場合高さ」2.5mまで。

コントロールポイント

コストを考えれば道路は最短距離である直線のほうがよいが、実際の路線選定では技術的・社会的に大きな制約となる場所を「コントロールポイント」といい、可能な限り避けて道路を計画する必要がある。

項目 一次コントロール(必ず避ける場所) 二次コントロール(できれば避ける場所)
自然条件 地形 山脈、渓谷 峠、湖沼、池、中小河川
地質 大規模な地滑り地帯、崩壊地帯 軟弱地盤地帯、断層の方向
関連公共事業 インターンチェンジ位置と取り付け道路の関係、重要な主要道路と鉄道との交際位置 インターチェンジ付近の線形・交差箇所
環境条件 社会環境 学校、病院、老人ホーム、養護施設、住宅密集地 集落、工場、工業団地
自然環境 自然環境保全特別地区、国立公園特別保護地区 自然環境保全地域、県立公園、公園
文化財・記念物 国宝、重要文化財、特別名勝、特別史跡、特別天然記念物 文化財、寺社、仏閣、名勝、史跡、記念物
公共施設 空港、大規模鉄道駅、大規模港湾、大規模発電所 鉄道、道路、港湾、送電線

線形設計

平面設計

道路設計の基本要素は「直線」「円弧曲線」「緩和曲線」の3つで、道路の平面線形はこの組み合わせで構成されている。

直線 2点間を最短距離で結ぶことが出来る。しかし長い直線道路は居眠り運転やスピードの出し過ぎを招くので出来るだけ避ける。また地形に合わない無理な直線は工事費の増大を招く。
円弧曲線 道路のカーブ部分。カーブを走行するとき、車には遠心力が働くので、速度に合わせた適切な半径、曲線の長さなどが必要となる。
緩和曲線 直線区間から曲線区間へ直接移行すると、急激なハンドル操作を要求されたり、突然大きな遠心力がかかるなど、乗り心地や安全性に悪影響を与える。そこで、直線から円弧曲線へ徐々に変化する緩和曲線を間に挟む必要がある。緩和曲線にはクロソイド曲線などが利用される。

縦断設計

上り坂・下り坂などに関する線形を縦断線形という。極端な上り坂・下り坂は車両速度に大きく影響を与え混雑の原因になることもある。

  • 勾配:上り坂・下り坂の角度のこと。設計速度に合わせて表のとおり定められており、120km/hの道路の場合、100mの区間で2mの高低差までであれば認められる。

設計速度 勾配の制限値(%)
規定値 特例値
120 2 5
100 3 6
80 4 7
60 5 7~8
20 9 11~12

  • 縦断曲線:縦断勾配が変化するところに導入する線形を縦断曲線という。上り坂・下り坂が直線だけで出来ていると道路に「折れ」が出来てしまい、走りにくかったり路面に車両の底がこすったりするなど問題がある。このため、放物線の形の曲線を間に挟む。

片勾配・カント

曲線部分を走行する車両には、曲線の外側へ押し出そうとする遠心力が働く。このため道路の片側を高くすることで、車両に遠心力と反対方向の傾きを与え、走行を快適・円滑にする。これを片勾配やカントと呼ぶ。

参考:wikipedia線形

交差点

交差点は道路を接続させ、道路ネットワークとして機能させる役割を持つ。一方で信号によって制御されることから、交通渋滞の原因になることが多い。

  • 平面交差:交差点に集まる道路の数によって、3枝交差(T字・Y字)、4枝交差(十字)、多枝交差、ラウンドアバウトなどに分類される。交差点の設計の基本は単純・コンパクトにすることであり、原則4枝交差以下が望ましい。

  • 立体交差:交通の円滑化の向上を目的に立体的に交差させ、オーバーパスかアンダーパスに分けられる。高速道路の場合は原則立体交差とし、国道などでも交通量に応じて立体化する場合がある。また道路と鉄道も原則として立体交差でなければならないと定められているが、現実には平面交差(=踏切)が多く存在している。

舗装

アスファルト舗装 最もよく利用されるアスファルト混合物による舗装。長所として、敷設が比較的簡単で短時間での舗装が可能、乗り心地も良く騒音・振動も小さい。短所としてコンクリートより寿命が短い(5~10年で補修が必要)。近年原油単価の上昇によりコストが高くなっているため、長期的に見るとコンクリートのほうが優れているとも言われる。
コンクリート舗装 主にセメントコンクリートを用いた舗装。固まるまでに約1週間もの時間がかかるために補修や修繕には向いていないが、アスファルト舗装に比べて耐性に優れており、通常は20年、場合によっては50~60年も舗装し直さなくて済む。このため、高速道路・臨港地帯のような重車両が頻繁に通る場所、トンネル内・急傾斜の坂道などの補修を頻繁に行うことが難しい場所に多く使われる。
ブロック系舗装 ブロックを敷き詰めて行う舗装。デザイン性に優れている。
その他の舗装 樹脂系舗装、石張り舗装、タイル舗装、土系舗装など。


高速道路

インターチェンジ・ジャンクション

高速道路は原則として信号機や交差点を極力設けない。高速道路への流入はインターチェンジ(IC)を使用し、高速道路同士での交差はジャンクションと呼ばれる。インターチェンジ・ジャンクションの形には、全ての車線で平面交差をしない「完全立体交差型」と、1箇所以上平面交差をする「不完全立体交差型」がある。完全立体交差型のほうが安全性が高いが、設置スペースや建築資材を多く必要とするため、コストは高くつく。日本では、設置スペースが比較的小さく済むトランペット型やY型が多い。

参考:wikipediaインターチェンジ

歩道・自転車道

歩道

 歩道(ほどう)とは、歩行者が通行するための道路。車道橋に設置されるもののほか、歩行者専用道路、遊歩道(プロムナード)、緑道・自然歩道(長距離自然歩道)などを含む場合がある。
 単なる歩行用の空間としてだけではなく、オープンカフェを設置するなどして賑わいの発生する空間としても機能する。
人と車の交通形態によって、フルモール、トランジットモール、セミモールの3タイプに分類される。
フルモール 歩行者だけが通れる歩行者専用通路の形態。
トランジットモール 歩行者専用空間とした道路に、低速で走行する路面電車、バスなどの公共交通機関を導入した空間。欧米で多く見られる。
セミモール 幅の広い歩行者専用通路と自動車用通路によって構成される形態。

交通セル

市街地の一部を「セル(細胞)」状に仕切り、その中は歩道のみとすることで都心部の歩行環境と自動車利用の両立を図る都市交通政策。
一般的に環状道路の内側を歩道やトランジットモールで区切ってセルとし、セルの外側に駐車場を設け各セル内には自動車を進入させない。
 もともと都市を囲む城壁があったところに環状道路を設置した都心部を持つことが多いヨーロッパの都市で多く見られる。

自転車道

自転車を自動車交通から分離するために作られた専用道路。自転車は都市内での短距離の移動に適していること、健康増進・環境保全に貢献することなどから、平地の多いオランダなどでは自転車を活用したまちづくりが積極的に進められている。

  • 日本での区分
    • 自転車道:自転車専用の走行空間として、車道の横に設置される道路。
      • 自転車レーン:車道の一部を自転車専用とするもの。法律上は車道の一部。
    • 自転車歩行者道:法律上は自転車は車道を走らなければならないが、歩道の一部を自転車専用の走行空間とするもの。
    • 自転車専用道路:車道から完全に独立して自転車だけが走行できる道路。いわゆる「サイクリングロード」。スポーツやレクリエーションとしての自転車利用を主な目的として、河川や湖の沿岸、海岸、鉄道廃線跡などに、公園などと一体として設置されることが多い。
    • 自転車歩行者専用道路:歩行者も利用できるサイクリングロード。

トンネル

トンネルの工法

シールドトンネル工法 シールドマシンを利用して穴を掘る工法
TBM工法 トンネルボーリンググマシンを利用して穴を掘る工法
開削トンネル工法 地面を掘り下げてトンネルの構造物を作り、後で埋め戻す工法。地面に近い部分や、駅のように大規模になる施設を作る際に使われた。1960年代ごろ地下鉄駅を作る際よく使われたが、現在はあまり使われない。
沈埋トンネル工法 箱型のトンネルを水底に沈め、これを接続してトンネルにする工法。

橋の構造

桁橋 2つ以上の支点上に水平に桁を架けて通行する橋。最も古くからある一般的な形式。建設費が比較的安いことから、最も多く採用される。
ラーメン橋 橋脚と主桁が結合された骨組(ラーメン)構造を用いた橋。地震による変形などを小さく抑えることができるため、耐震性に優れている。
トラス橋 部材を三角形に組み合わせたトラス構造を用いた橋。三角形のトラス構造は力を加えても変形しにくく性質があり、重量のある鉄道が通る鉄道橋に多く使われる。
アーチ橋 上向きの弧(アーチ)を使った橋。深い渓谷など、橋脚を造ることが難しい場所で使われることが多い。
斜張橋 塔から斜めに張ったケーブルを橋桁に直接つなぎ支える橋。吊橋の次に長大な橋に向いており、美観にも優れる。
吊橋 ケーブル、ロープなどで桁や床版を吊り下げた橋。長大な橋に向いており、世界の長い橋の上位の多くは吊橋。一方風や加重によって揺れやすいという欠点ももつ。

参考:wikipedia

交通渋滞

交通渋滞の定義は、道路管理者や交通管理者ごとに異なっているが、警視庁では統計上、下記を渋滞の定義としている。
  • 一般道路:走行速度が20km/h以下になった状態
  • 高速道路:走行速度が40km/h以下になった状態

道路構造上の渋滞の原因

交差点 一般道路での渋滞の最大の原因となる。対向車線の車が途切れないことによる右折待ち、横断歩道上の歩行者が途切れないことによる左折待ち、直線状のある信号が青なのにその先の信号が赤のままなどの信号同士の協調が不適切な場合などの理由により渋滞が発生する。
車線数の減少・車線の合流部 路上駐車などによる実質的な車線数減、道路工事による車線規制、高速道路の合流部などが渋滞の原因となる。
織り込み交通 高速道路の合流部などで本線に合流したい車と本線から出る車の経路がクロスしてしまう場合、事故を避けるため減速し渋滞の原因となる。クローバー型ジャンクションなどで見られる。
カーブ 急カーブなどを曲がる際アクセルを緩めるため渋滞の原因となることがある。
サグ すり鉢状の地形にある道路(サグ)ではドライバーが谷底に到着して上り坂となる地点で、上り坂に変化したことに気が付きにくいことからアクセルを強く踏むタイミングが遅れ、速度低下が発生しやすい。
トンネル トンネルは視覚的に狭く感じ明るさも変化するため、ドライバーはその入り口付近でアクセルを緩めてしまいやすい。

道路構造上の渋滞対策

右左折レーン 右左折による渋滞が多い箇所に専用のレーンを設置する。
多枝交差点の解消 道路が5本以上集中する交差点は渋滞の原因となりやすいため、交差点の形状を改善する。
立体交差 道路を立体交差にすることで交差点を解消する。
道路の拡張・バイパス 道路自体を拡張したり、新たなバイパスを設けることで道路の容量を増加させる。


参考

国土交通省 道の歴史

  • 最終更新:2021-06-27 01:05:31

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