都市計画用語集-都市計画


都市計画

 都市計画とは、都市の将来像(人口、土地の利用の仕方、道路・公園・下水道といった様々な施設等)を想定し、そのために必要な規制・誘導・整備を行い、都市を発展させようとする方法や手段のことである。
 歴史的には、産業革命以後、スラムや伝染病をはじめとする都市環境の悪化が社会問題となり、やがて近代都市計画が生まれることとなった。
参考:wikipedia 都市計画

日本の都市計画制度

都市計画法

都市計画法 都市再開発法 建築基準法の3つを都市三法といい、都市計画に関する各種制度を定めている。

マスタープラン

都市の将来像や整備方針を示す、都市計画の大本となるプランを「マスタープラン」という。

  • 都市計画区域マスタープラン
    • 都道府県が、①都市計画の目標、②区域区分(線引き)の有無、③都市計画の決定方針などを決めるもの。

  • 市町村マスタープラン
    • 市町村が都市計画に関する基本的な方針等を決めるもの。これに基づき①具体的に各地域の土地の使い方を定める土地利用に関する計画、②道路・公園・下水道といった都市施設に関する計画、③駅前再開発などの市街地開発事業に関する計画などを決める。
   富山市都市マスタープラン概念図
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区域区分(線引き)

都市計画を決めるに当たっては、まず都市計画法や建築基準法が適用される「都市」の範囲を明らかにする必要がある。そこで市街化区域と市街化調整区域との区分を都道府県が決める。これを一般に「線引き」と言う。

都市計画区域 線引きがある都市計画区域 市街化区域 優先的・計画的に市街化を進める区域。具体的には、既に市街地となっている区域と近い将来優先的に市街化を予定している区域によって構成される。
市街化調整区域 市街化区域とは反対に、市街化を抑える区域。この区域は、開発行為(建造物の新築・増築など)は原則として抑えられ、都市施設(インフラ・学校・公園など)の整備も原則として行われない。たいてい都市周辺の農地の多い地区など、市街化区域の周辺が市街化調整区域に指定され、市街地が無秩序に広がるのを防ぐことを目的としている。
非線引き区域(線引きがない都市計画区域) 市街化区域と市街化調整区域とに区分されていない都市計画区域。非線引き区域は地方都市などに多い傾向があり、土地利用に関する規制は市街化区域より緩い。
都市計画区域外

用途地域

C:Sでもシムシティでも建物が建つ地区は住宅・工業・商業と区分するが、現実の都市計画でも同じように、住宅・工業・商業など使い道の違う建物がごちゃ混ぜになることを防ぐために、市街地の大枠としての土地の使い道を決めるものを「用途地域(ゾーニング)」という。用途地域はそれぞれ、建てられる建物の種類・建ぺい率・容積率・高さ制限などを決めている。

  用途地域 説明 建ぺい率(%) 容積率(%)
住居系 第一種低層住居専用地域 低層住宅のための地域。小規模な店や事務所をかねた住宅や、小中学校などが建てられる。 30・40・50・60 50・60・80・100・150・200
第二種低層住居専用地域 主に低層住宅のための地域。小中学校などのほか、150㎡までの一定の店などが建てられる。
第一種中高層住居専用地域 中高層住宅のための地域。病院、大学、500㎡までの一定の店などが建てられる。 100・150・200・300
第二種中高層住居専用地域 主に中高層住宅のための地域。病院、大学などのほか、1,500㎡までの一定の店や事務所など必要な利便施設が建てられる。
第一種住居地域 住居の環境を守るための地域。3,000㎡までの店舗、事務所、ホテルなどは建てられる。 60 200・300・400
第二種住居地域 主に住居の環境を守るための地域。店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスなどは建てられる。
準住居地域 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域。
商業系 近隣商業地域 まわりの住民が日用品の買物などをするための地域。住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられる。 80 200・300・400
商業地域 銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域。住宅や小規模の工場も建てられる。 200・300・400・500・600・700・800・900・1000
工業系 準工業地域 主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域。危険性、環境悪化が大きい工場以外は、ほとんど建てられる。 60 200・300・400
工業地域 どんな工場でも建てられる地域。住宅やお店は建てられるが、学校、病院、ホテルなどは建てられない。
工業専用地域 工場のための地域。どんな工場でも建てられるが、住宅、お店、学校、病院、ホテルなどは建てられない。 30・40・50・60
※建ぺい率・容積率の上限は各自治体が都市計画の中で度の上限値にするかを決定する。

参考:wikipedia 用途地域

その他の地域地区

用途地域以外にも、同じように都市計画区域内の土地をどのように利用するべきか、どの程度利用するべきかなどを決めるものを「地域地区」という。

  • 特別用途地区
  • 高度地区
  • 高度利用地区
  • 高層住居誘導地区
  • 特例容積率適用地区
  • 特定街区
  • 都市再生特別地区
  • 防火地域、準防火地域
  • 災害危険区域
  • 景観地区(美観地区)
  • 風致地区
  • 特定用途制限地域
  • 駐車場整備地区
  • 緑地保全地域
  • 生産緑地地区
  • 伝統的建造物群保存地区

参考:wikipedia 地域地区

都市施設

都市での生活や都市機能の維持に必要な施設のこと「都市施設」といい、都市計画法では11種類ある。

 (1)道路、都市高速鉄道、駐車場などの交通施設
 (2)公園、緑地などの公共空地
 (3)水道、下水道、ごみ焼却場等の供給施設・処理施設
 (4)河川、運河などの水路
 (5)学校、図書館、研究施設などの教育文化施設
 (6)病院、保育所などの医療施設、社会福祉施設
 (7)市場、と畜場、火葬場
 (8)一団地の住宅施設
 (9)一団地の官公庁施設
 (10)流通業務団地
 (11)そのほか政令で定める施設

建築基準法

個別の建物について建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定めた法律。都市計画ともかかわりが深い。

接道義務

 C:Sではすべての建物は道路に面していなければならないが、現実でも同じように火災・災害時の避難・消防・救助などが行えるよう、建築物は必ず法律に定められた幅の道路に接していなければならない。これを「接道義務」といい、原則2m以上の道路に接していなければならない。

建ぺい率

 敷地面積に対する建築面積(建坪)の割合のこと。建ぺい率を無視して敷地いっぱいに建物を建てると建物同士が隙間なくくっついてしまい、防火と住環境の面で問題が多い。
 100坪の土地で建ぺい率が60%の地域の場合、最大60坪(100坪×60%)の建築面積の建物を建てることができる。
用途地域ごとに上限が定められており、これを超える建物は建築できない。

容積率

 敷地面積に対する建築延べ面積(延べ床)の割合のこと。C:Sにおける「低密度住宅」や「高密度住宅」の「密度」に相当するもの。
 例えば、50坪の土地で容積率が200%の地域の場合、最大100坪(50坪×200%)の延べ床面積の建物(1階40坪、2階30坪、3階30坪のような)を建てることができる。
用途地域ごとに上限が定められており、これを超える建物は建築できない。


高さ制限

 各敷地に無条件に高い建物を建てると、周辺の日照・採光・通風に大きな影響を与えたり、景観を損ねたりするため、用途地域などにおいて建物の高さを制限する。

都市計画の歴史・都市計画理論

ルネサンスの理想都市

 15世紀ルネサンス期のイタリアでは、①城壁を円形・正方形・星形などの幾何学模様にする、②放射状・格子状に街路を設置する、③広場や記念碑的な建造物を配置するといった都市が理想と考えられるようになった。これは古代ローマの建築家ウィトルウィウスなどの思想に影響を受けている。
 例としてシエナのカンポ広場、パルマノヴァなど。

バロック都市計画

 バロック期には、眺望を強調し、広場や記念的な建造物の間を広い直線道路で結ぶ壮大な都市計画が構想された。
 特に19世紀フランス皇帝の強い権力を背景に行われたオスマンによるパリ改造が有名。
 オスマンは生活環境・都市衛生が極めてひどかったパリを改造するため、①エトワール凱旋門から放射状に並木が配置した広い12本の大通りを作り都市の軸線を配置、②直線的で幅の広い道路により眺望を確保、③道路両脇の建物は高さ・色・デザインを統一、④ルーヴル宮殿新館・オペラ座など記念的な建造物を建設、などを行った。

田園都市

 産業革命が進行した19世紀末のイギリスでは、都市に人口が集中し、公害・遠距離通勤・高い家賃・失業などに苦しんでいた。そこでエベネザー・ハワードは都市の機能を農村に移動させ融合させた田園都市を提唱した。
 ハワードは①3万人程度の小さな都市の中に住宅と工場・商業地が隣接した職住近接型の都市、②田園が都市を取り囲み都市拡大を制限、③中心部に公共施設・中央公園を置き、そこから並木道の放射状道路と環状道路を配置、といった都市の構想し実際にレッチワースという街を作った。

近隣住区論とラドバーン方式

 20世紀になり自動車が発明され普及することで、自動車交通による渋滞・交通事故などが都市の問題となった。
そこでクラレンス・ペリーにより、①小学校や教会を核としたひとまとまりの地区を設定、②その外側に幹線道路を配置し地区に用事のない車が入ってこないようにする(通過交通の排除)、③住民の日常生活は歩行可能な地区の範囲内で完結させる、といった特徴を持つ「近隣住区論」を提唱した。
 またその実践例として建設された街ラドバーンでは徹底的に車道と歩道を分離し、歩道と車道を立体交差させたり、道路をクルドサック(袋小路)にして住民は緑道を通って学校や商店に行くことができるようにし「ラドバーン方式」と呼ばれている。

ニューアーバニズム

 自動車中心の社会が進展することによって市街地は無秩序に広がり(スプロール化)、郊外の幹線道路沿いに作られた巨大商業施設や全国チェーンのロードサイド型店舗が乱立し、一方で古くからの中心市街地や商店街が活気がなくなり空洞化する現象が国内・国外で発生している。
 これに対して都市の郊外への拡大を抑えると同時に中心市街地の活性化を図り、生活に必要な様々な施設が狭い範囲内に集まる効率的で持続可能な都市を目指すニューアーバニズム(似た概念としてコンパクトシティ、アーバンビレッジなど)が盛んになった。
 ニューアーバニズムでは鉄道やバスなど公共交通を重視し、公共交通と徒歩で行ける狭い範囲内に日常生活(通勤、通学、買い物、通院など)に必要な施設や緑地・オープンスペースなどを置く。また住宅の1階をカフェにするなど、住宅・商業地・オフィスなどを意図的に混在させるミックスト・ユース(混合利用)などにより職住近接を図る。


参考


  • 最終更新:2017-10-09 20:36:02

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